東京の猫寺といえば世田谷区の豪徳寺と文京区の護国寺が有名ですが、このうち、猫がいるのは護国寺のみです。豪徳寺の境内では猫はみかけないのですが、そのかわり、奉納された招き猫や猫柄の絵馬がたくさん並んでいました。
豪徳寺の招き猫
豪徳寺は、かつて存在した世田谷城の跡地に寛永10年(1633年)に創建された曹洞宗の寺院です。重文級の文化財はありませんが、境内の梵鐘は1679年に制作された古いものです。また、豪徳寺は彦根藩井伊家の菩提寺で、墓地には井伊直弼の墓があります。
そして、一説によると、豪徳寺は招き猫の発祥地とのこと。この招き猫伝説ゆえに、豪徳寺は猫寺と称されます。
お寺側も、この招き猫伝説を積極的にアピールしています。
招猫観音を祀る「招猫殿」の横には、招き猫の奉納所があります。無数の招き猫は、参拝者が奉納したものです。
寺務所で招き猫を拝領して、ここに奉納します。お布施は、身長約30センチの大型招き猫は5,000円、最小の2センチ程度の招き猫は300円です。
そのほか、豪徳寺では絵馬も猫柄(招き猫)です。
これはこれで面白いのですが、しかし、わたしが探している猫寺は生身の猫がいるお寺。ほかにいってみましょう。
生身の猫がいるお寺
お寺の縁起が猫に無関係でもかまいません。お寺の由来や歴史にかかわりなく、いま現在、野良猫が住み着いている寺、それが、わたしが探している猫寺です。
お寺に野良猫が迷い込んだ場合、殺生はできませんし、参拝者が無邪気に餌やりをするので、猫たちはなんとなく境内に居ついてしまいがちです。
東京にはたくさんのお寺があり、そのなかには野良猫が住み着いているお寺が結構あります。街で見かけたお寺の門をくぐってみたら本堂の前に猫が寝ていた、というのは、きわめて頻繁に遭遇する景色です。
ちなみにこちらは、日暮里にある南泉寺の猫。お寺の前を通りかかったら猫と目が合ったので、門を入って写真を撮りました。
これがわたしが見たかった光景。お寺らしい静謐な雰囲気のなかで、ゆったり暮らしている幸福な猫です。
しかし、一匹だけでは猫寺感は薄いですね。
猫が多いお寺といえば福井の御誕生寺や鎌倉の光明寺が有名ですが、東京に限って言えば、おすすめは文京区の護国寺です。
護国寺の猫たち
護国寺は、東京都文京区にある古い大きなお寺です。天和元年(1681年)に徳川綱吉の命により創建された歴史あるお寺ですが、一般市民の間ではあまり知名度がありません。
護国寺と聞くと、みなさん地下鉄の護国寺駅を思い浮かべると思います。つまり有名なのは地下鉄駅のほうで、お寺そのものは、
「へー、護国寺駅の近くには本当に護国寺があるんだ」
という程度の認知度でしょうか。駅前にそびえる講談社のほうが、むしろ圧倒的に知名度があります。
したがって、訪れる人も多くはなく、境内に「ちらほら」という程度。そのうち三分の一程度は外国人なので、外国人向けのガイドブックには載っているのかも知れません。
この程度のボチボチの人出が、猫たちにとってはちょうど暮らしやすそうです。
護国寺
護国寺の門は、不忍通りに面しています。地下鉄護国寺駅の2番出口をでると目の前がお寺の門です。
門を入ると、高台に昇る階段があります。階段の上に見えるのは不老門です。本堂はその先にあります。
文京区は高低差が多い土地です。文京区内には「〇〇坂」と名前がついているものだけで115の坂道があるとのこと。
護国寺の本堂は高台にあります。高台へあがる階段は、豊島台地の南端にあたります。東京の中心方向からやって来ると、目白台地と小日向台地に挟まれた谷筋にある道路(目白通り)を直進し、突き当たった丘の上に護国寺があることになります。お寺の立地としては、とても見栄えのする場所です。
本堂(観音堂)は1697年(元禄10年)の建築です。国の重要文化財に指定されています。
外国人がたくさん来るのに、建築年の表示は日本語だけです。観光地として売り出すつもりはなさそうです。外国人にもありがたみがわかるように、英語の説明板がほしいところです。
本堂の前に鎮座する大仏(釈迦如来坐像)は、なんとなく大雑把な造形でした。
護国寺の猫たち
猫たちは、お寺の門を入り、階段の手前、向かって右側の植え込みや駐車場のあたりに多くいます。みな成猫で、子猫は見かけませんでした。
ここに写ってる「民謡碑」は、民謡研究家の青木好月を顕彰して昭和五十七年に建立されたものとのこと。
猫たちは、緑豊かな境内でのびのび暮らしています。
夏でも過ごしやすそうですね、ここは。
護国寺の参道わきに鳥居がありました。鳥居の先には浅間神社(富士浅間神社)があります。その手前に茶トラを発見。
浅間神社は富士山を神格化して祀った神社で、日本の各地にあります。この丘を登って頂上の浅間神社をお参りすることで、富士山の参拝に代えるというものです。
茶トラのアップ。
事務所の前、日本庭園風に整備された一角でも、一匹発見。
駐車場あたりを歩いていた2匹。
夕方が近くなり、猫の瞳孔が開いてきたようです。カメラの測光の光を反射して目が光ってしまいました。
夕方の空はこんな感じ。
参拝に来たおじさんからもらった鮭の切り身を食べるキジ白。
ほかにも、餌やりに通っている方がいるみたいです。猫たちの栄養状態は良好のようです。
この日に出会った猫は6匹。護国寺は猫たちにとって十分な広さの棲み処です。しかも安全で、食べ物に困らない。池あり、山あり、林ありで遊び場所はいっぱい。
やっぱり、お寺に住み着いた猫は幸運な猫ですね。